Chess
「お前は将棋も弱い」
チェスで惨敗したスザクに、ルルーシュはそう返した。
二人の勝負を見ていたシャーリーは、聞きなれない単語に首をかしげる。
「しょーぎ?ってなに?」
「チェスの親戚みたいなものだよ。日本の遊び」
「ふーん、イレヴ……日本にもそんなゲームがあるんだ。ルルはそれも強いの?」
「どうかな。スザクが強ければ、俺は強いことになるんだろうが……なぁ?」
明らかにからかっている顔でスザクに問いかけるルルーシュは、再会した友人の将棋の腕前はチェスと同じなのをちゃんと知っている。
「がさつになったなと思ったけど、性格も悪くなった?」
「お前は口が悪くなったな……っとシャーリー、飲み物を取ってくるなら俺たちの分も頼む」
「……解った」
いきなり立ち上がったシャーリーの返事に、ルルーシュは首を傾げた。立ち去る姿にも心なしか元気が無い。
「具合悪いのか?」
「え?ちょっ……」
ルルーシュにとっては大したことではなかったのだろう。妹が熱を出したときにする、いつもの動作だ。しかし、シャーリーが硬直するには十二分な出来事だった。
「熱は無いみたいだな……」
シャーリーの額から手を離し、彼女を座らせたルルーシュはスザクを見る。
「僕が見てるから」
スザクの言葉に頷いたルルーシュは、飲み物を取りに部屋を出て行った。
尚も固まっているシャーリー見てスザクは微笑んだ。
面白くも無い勝負を見守り、彼の友達である自分を気遣い、昔話に拗ねている。彼女の気持ちを聞いてから、彼女の行動の全てが微笑ましい。
出来ることなら不安や不機嫌になる話題は避けたいけれど、昔話は楽しくて止められなかった。それに、スザクの知らないルルーシュを彼女は知っているのだ。
「ルルーシュが気遣いを見せるのは、ナナリーだけだと思ってたよ」
「そんなことないと思うけど……あれで結構フェミニストだよ。この間も……」
──数分後、飲み物を手に戻ってきたルルーシュは『ルルの変なところ』で盛り上がる二人に憮然とした。
三角にもならない関係が愛おしい