「何を持っていると思いますか?」
「カレーを愛する心と・・・・眠気と、アロマ・・・・かな」
それを聞いた八千穂は大笑いだ。
「あはははッ!間違いないよね〜。は〜、おかしー!」
「そんなに大笑いしてると聞こえちゃうよ?」
「大丈夫だよ〜。あと何かあるかなァ?」
話題の主の姿が見えないことを確認して、八千穂は更に話を続ける。
クラスメイト達とようやく気負わずに話が出来るようになってきたこの頃だが、八千穂との仲はそれより大分進んでいた。昼には御飯を食べながら他愛のない話 をし、夜には見ていたテレビの感想メールを送りあう。他にも親しくなった人間はいるが、時間で計るならば八千穂が一番だろう。
同じクラスで、転校してきた日から秘密を共有し合う仲。加えて、友達作りの天才少女・八千穂なのだから当然だ。そんな彼女に新米ハンターごときが敵うわけ も無く、当初は警戒していた葉佩もすっかりその才能にやられてしまっていた。
今日はそんな彼女にも屈しない、強靭な精神を持った皆守をネタに友情を深めているのだ。これがなかなか楽しかったので、葉佩は自分の中の皆守に関する情報 を掘り起こした。
「そうだな・・・あぁ、面倒見はいいと思う」
「え?」
考えながらの発言だったので、独り言のような言葉だった。しかし、八千穂はそれを聞き逃さなかった。ただ、会話の内容から全く予想できなかった言葉なので 理解ができない。怪訝な顔で聞き返した八千穂に、葉佩は自分の発音が悪かったのかと表現を変えて言い直した。
「ん、日本語変だった?あー・・・・皆守君は親切です。解る?」
「解るけど・・・・・えー、皆守クンがァ〜?想像できないなァ・・・・」
納得できない八千穂の気持ちは、葉佩にもよく理解できた。
「俺も、最初は人間嫌いだと思ってた・・・。でもさ、眠い眠いって言いながらも誘えば夜ついて来てくれるし、話しかければ答えてくれるよ。こっちから何か したときに、無視はしないんだよね。」
「う〜ん・・・・そう言われればそうかも」
「親切なことをしてしまう自分が嫌って感じがする」
「なるほど〜、そんな感じするね〜。九龍クンってば鋭いッ!よッ、名探偵ッ!!」
「ハッハッハッ、このワタシに解けない謎など無いのだよ。ところで君・・・・」
ワザとらしい笑いを発しながら、葉佩は八千穂の鞄を指差す。
「鞄の中にキャラメルを持っているね?それを僕に恵んではくれないだろうか?」
「え、え?何で知ってるのッ!?」
驚いている八千穂に、葉佩は得意気に答えた。
「ハンターだからです」
「すっごぉ〜いッ!!」
教室に入ってきた皆守が、目の中のキラキラ成分が増した何時もよりピュア度アップの八千穂の相手をする羽目になるのはこの直後のことだ。




みーは面倒見の良さ、やっちは親しみやすさ、くーは観察眼を持っていて、それで三人のコミニュケーションが取れてるんだろうなぁと思ったわけです。その人 がいない時にこそ、その人のことを考えるものだと思うのです。