状況報告
「・・・・・・・・・」
午後七時。
冬の空は夜が長い。
そんな中、学園と外界を隔てる壁の一角に葉佩はいた。
じっと壁を見つめ、意を決したように手近な樹を登りだ
した。
壁の最上部に並ぶ高さまで登ると、躊躇いも無く飛ぶ。
行き着く先は壁の上だ。
帰りのためにワイヤーを引っ掛け、葉佩は壁を飛び降りる。
「いってきま〜す」
誰に言うでもなく呟いて、彼は新宿に消えた。
事の起こりはひとつのゲームだった。
かくれんぼを知らない人はいないだろう。それをやった
のだ。
葉佩と響とトトと墨木と夷澤で。
補足すれば、夷澤は強制参加だった。
笑顔で走ってきた葉佩に、笑顔で一発食らわせられてト
トと墨木に抱えられたのである。
復活した後の抗議は、やはり葉佩の一発で報われた。
じゃんけんで選んだ鬼は墨木だった。
ぶっちゃけ手強い。
罰ゲームありのこのゲームで、鬼がスペシャリストなん
て最悪だ。
楽しそうだが真剣に・・・いや、楽しいからこそ真剣
に、皆は隠れた。
そんな中、響少年はおっかなびっくり木に登ったのであ
る。
そして下りられなくなった。
幹にへばりつき、半泣きでオロオロしている響をひっそ
り移動中の葉佩は見つけた。
このままでは、最初に見つかるのは間違いなく響になっ
てしまう。
罰ゲームを受けることは、響にとって相当の苦痛になる
だろうと思った葉佩は派手に移動を開始した。
結果、一番最初に見つかったのが葉佩九龍という異例の
結末になったのである。
学園を抜け出してコンビニへ買出し。
その罰ゲームを果たすべく、彼は学園を脱出したのであ
る。