通人
傍受
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
アホ過ぎて話にならん。
皆守の顔にはそうとしか書かれていなかった。
「ま、センパイなら楽勝ですよ。じゃあオレは寝るんで」
閉められたドアの前で、皆守はため息をついた。
「・・・・・・・何やってんだ、あいつは」
自室に戻るために歩きながら、八千穂にメールを返す。
さっきの話は本当だった。
あの馬鹿は校外だ。
葉佩にメールした八千穂は、彼が校外にいることを知らされたらしく皆守に真偽を問うた。
問われた皆守は何も知らない。
驚いて葉佩の自室を訪ねてみれば、そこはもぬけの殻。
最近の夜遊びに持って行くものは残っているから、そっちのせいではないらしい。
騒ぎを大きくするより、昼の騒動のメンバーに聞いたほうがいいだろうと皆守は判断したのである。
そこで有難くない真実を知ってしまった。
葉佩は現在、非常に楽しく校則違反を実行中らしい。
協会の依頼を受けてこの学園に入り、外の様子を知らなかった彼にとって新宿は面白くてたまらないフィールドのようだ。
人がいっぱいで凄いねってメールきたよー!
それに、やたら声かけられて困るって・・・・・これってヤバイよね?
「おとなしくコンビニ行って帰ってこいよ・・・・」
返してきた八千穂のメールに呟いたところで意味は無い。
あの身長にあの言動。
他人の判断基準からすれば、未成年枠ではなく子供枠で括られるのは間違いない。
かけられる声の内容は、「寄ってかない?」ではなく100%「お家どこ?」だ。
そのうち、親切な誰かが警察に通報して大事になるのでは?
警官相手に鬼ごっこをして喜ぶ野生児を思い浮かべて、皆守の増さなくてもいい心労は増した。