暗号解読


コンビニに行こうと抜け出して、面白い光景についふ らふら歩き出し、興味が湧いたので足を伸ばしてみたのだ。
いいところだと言っていたから。

「案外近い」

とある学校の前に立つ。
時刻は夜中で、周りにあるのは住宅だ。
先ほどの繁華街と同じ区内にあるとは思えない静けさである。
中に人がいる気配はない。
そこまで考えて葉佩は自分の考えに修正を加えた。

それが普通だから、自分。天香は人も学園もおかしいから。

各教室の鍵を持つ関係者以外の立ち入りが制限される学校なんて、そうそうあるものではない。
そもそも、夜になっても鍵さえあれば生徒の立ち入りが可能な学校なんてないだろう。立ち入ろうとする生徒もいないはずだ。
すっかり天香を基準に考えている自分に苦笑する。

自分の従兄も、こんなことを考えてここにいたのだろうか。
本当にいいところだと、自分にとって最高の宝を手に入れた場所だからと言っていたから。

「あー、旧校舎行きたいよなー。最高の宝って何だよー?ゲットレしたい!」

ハンター魂を擽る話を思い出して、閉ざされた正門の格子を掴んで軽く揺すった。
見せて欲しいとせがむ自分に、従兄はそれは自分のものではないからと結局見せてくれなかった。
見せてくれないのなら、せめてどんなものなのか教えて欲しいと言っても駄目だった。
口では説明できないと言う。

手に入れたのに自分のものではない宝。
しかも口では表せない。

なんだろな?気になるな。










「やっぱ解んねー!」

さして考えもせずに、葉佩は思考を放棄した。