犯人追跡

角を曲がってそのまま真っ直ぐ。
寝静まった家々と、道路の標識。
皆守は黙々と歩みを進める。

目指すは真神。

一度も訪れたことの無い場所であっても、迷うことは無いと思った。
天香同様、この近辺で知らない人間はいない。
影では<魔人学園>とも呼ばれている有名な学園である。

葉佩の従兄はそこにいたらしい。
従兄は愛で地球を救ったと、ふざけたことを言っていた。


『お前の従兄は一体何者だ?』

素手で岩をも砕くとか、気合ひとつで山が吹っ飛ぶなどと眉唾物の話を自慢げに語る彼に、皆守は聞いたことがある。
話を聞く限り、葉佩の従兄はまるっきりスーパーマンだ。
しかし、世の中にそんな人間がいないことを皆守は知っている。
いるとすれば、自分たちのような遺伝子異常の持ち主だ。
それとて後天的なものである。
響のような人間はそうそういるものでもない。

だからその話は嘘だと判断した。
好きなものを持ち上げたがるのは人間の性だ。
だが葉佩のそれは度が過ぎている。
正直な話、とてもウザイ。
聞きたくない。
このあたりで釘を刺しておきたい皆守は、うんざりしているのが解るように質問した。
こうすれば普通は気づく。
だが葉佩は普通ではなかった。
さらに胸を張って答える。

『あの人はシホーです』
『シホー?』
『そ、至宝。オーパーツなんか目じゃないくらい。何よりも、誰よりも・・・・オンリーワンでナンバーワンだ』

宝探し屋の彼にとって、それは最高という意味だ。
結局、その後も従兄の話はことあるごとに出てきた。
それに付随して真神の話も。
旧校舎の地下が素敵な感じらしいから行ってみたいと、手に入らない玩具を欲しがる子供のように言っていた。


「不法侵入はしなかったようだな・・・・」
閉ざされた正門の前に立つ葉佩は、その時と同じ顔をしている。