ロイはつまみ食いをする。悪いと思ったことは一度もない。
 ただ、またにハズレるときもある。
「ぐぅっ!」
 慌てて口を押さえた。物体はまだ口にあるのに、胃がせり上がる。涙が浮かんだ。
 不味い。
 視界がぐらぐらする。不味い。
「ろ、ロイ君っ!? しっかりして下さいっ!」
「先生を呼んでくるっ」
 急変したロイに、リオンと王子は慌てながらも迅速に対応した。
 背中をさすられるロイは、皿に盛られた物体を見る。
 白い皿に具入りのコーンスープ。ロイの取り落とした大きなスプーンが、半分以上沈んでいる。
 普通だ。風味が生臭くねっとりしていて、貧血ように気が遠のく効果があるなんて、誰も思わないだろう。
 リオンと王子も知らなかったはずである。王子に勧められ、リオンは嬉しそうに食べようとしていたのだ。そんなリオンと王子に苛ついて、ロイはつまみ食い をしたのである。
「あ、あれ……」
 噛まないように舐めないように、口をもごもごさせながらロイは聞いた。
「何、入ってんだ?」
 原因は具に違いないとロイは推理した。
 まだ口の中にあって、非常に嫌な感じだ。さっさと吐き出したいが、リオンの前でそれはできない。
 でもこの場合、そんなプライドに果たして意味があるのだろうか。男心は解らないものだ。
 「確か、レツオウさんとミアキス様と一緒に作られたそうで……」
 ミアキス。名前が出てくるだけで、こんなに人を不安な気持ちにさせる人間はあまりいない。
 ロイの心は嵐の夜に漕ぎだした船のように……
「幻の魚の料理方法を色々試してみたそうです。カイル様が誉めてくれたから、私にも……って、ロイ君?ロイ君っ!」
転覆した。
ロイの中で、カイルの株がかなり上がった。







このあと、医務室でカイルとロイは鉢合わせするに違いないです。

「あんた・・・実は凄かったんだな」
「愛だからねー」
「なら言ってやれよ!!」
「あー、でも・・・うーん、愛だからなー。オレからは言えない」

砂糖と塩のチェンジされたクッキーを食べるのは定番だよね。