「カイル殿、隠して下さい!」
詰所の中へ、王子は慌てて飛び込んできた。他の女王騎士は出払っている。
ガレオンは嘘がつけない。アレニアは顔に出る。ザハークは庇ってくれない………カイル一人なのは、願ったり叶ったりの状況だ。
「お?……ああ、了解です。机の下にどーぞ」
「有難う!」
「任せて下さいー」
しばらくすると、さらに勢いよく扉が開かれた。
「兄上はおるかっ!」
仁王立ちで油断無く室内を見渡すリムに、カイルは首を振る。
「今日はまだいらっしゃいませんよー。隠れん坊ですか?」
「その通りじゃ…………後は兄上だけでのう」
えへらと笑うカイルを、リムはじっと見つめる。この男は嘘が上手い。
「王子は隠れるのお上手ですもんねー」
「………」
中に入っても、カイルの表情は変わらない。
「机の下、調べてみます?」
「……よい。邪魔をしたな」
「はーい、頑張ってくださーい…」
時を惜しむリムは、来たときと同様に去って行った。
戻ってくる気配がないのを確かめて言う。
「…もう大丈夫ですよ」
「………ひやひやしました」
机の下から出てきた王子は微笑んでいる。おっとりしていても男の子だ。スリルを伴う遊びが嫌いではない。
「かなり疑ってましたからねー。自分から言ったほうがいいんですよ」
この部屋で最も隠れやすい場所を調べるように勧めたのだ。疑っていた分だけ、リムは肩透かしを食らったのだろう。
「助かりました。有難うございます」
王族のくせに簡単に頭を下げる王子に、目尻を下げて言っておこう。
「いつでもどうぞー」
頼られるのは望むところだ。
書いたのにアップ忘れてました・・・。