「なぁ……」
「こ、こっちだよッ!ゼッタイ間違いなしッ!」
「………でもここ、さっき通らなかったかい?」



迷子だ。


彼らは新しい階層に進み、そして迷った。
八千穂の好奇心からくる暴走気味の前進を止めきれなかった葉佩は、ようやく主導権を取り戻したのだが………時すでに遅し。

真っ暗な部屋でゴーグルの電池も切れ、困った顔の取手と笑って誤魔化す八千穂の顔がハントのディスプレイの光で辛うじて見えるだけ。

敵影の反応はないので、慌てる必要がないのは救いだった。

「壁づたいに歩いてくしかないなぁ。俺、やっちー、かっちゃんの順番ね」
「分かったよ」
「うん……」

先頭の葉佩が足場と前方の確認をしつつ、三人はのろのろと進み始める。

しばらく無言で歩いていると、八千穂が遠慮がちに声を上げた。

「……九チャン」
「ん〜?足場気をつけろよ〜?」
「うん………ごめんね」

しょげている八千穂の上で、葉佩と取手はアイコンタクトを交わす。


エネルギー・チャージが必要ですな。
うん、そうだね。


同時に八千穂の手を握った。

「きゃッ!な、何!?」
「元気ないじゃ〜ん。せっかく三人できてるんだ。楽しくいこうぜ?」

葉佩がにやっと笑って言えば、後ろからは優しく取手の声がする。

「はっちゃんの言うとおりだよ。僕らは仲間なんだから、三人で頑張ればきっと大丈夫だよ」
「そうそう。三人しかいないんだから、一人がヘコんでたら残りの二人の負担が増すだろーが」


気にしなくていいから、いつもみたいに元気だしなよ。


言外の思いを感じた八千穂は、笑顔を浮かべる。

「…うん。エヘヘッ!元気出していこーッ!!」
「「おー!」」




一時間後――

「あッ!あそこに何かあるッ!二人とも急げ〜!!」


えっと……チャージしすぎ?
少し……。


二人は再びアイコンタクト。




―…―…―…―…―
二人では彼女を止められる訳もなく……。
出てくるバディは個性的すぎで……癒し系のヒナ先生と取手がいなかったら、葉佩は胃痛の前に敗れたんでしょうな。
レミオロメンのモラトリアムを聞いて浮かんだ話です。